トクショクシコウ展 ワークトーク/レポート

トクショクシコウ展/レポート
ワークトーク「特色を活かしたペーパープロダクトの発想とプロセス」

2010年2月13日、六本木のAXISギャラリーにて
かみの工作所「トクショクシコウ展」のワークトークが開催されました。
参加している6組のデザイナーは、
メインで活動しているデザインのジャンルも様々。

大友 学(デザイナー)
トラフ建築設計事務所(建築家)
菊地 敦己(グラフィックデザイナー)
NIIMI(デザイナー)
藤森 泰司(デザイナー)
三星 安澄(グラフィックデザイナー)

今回は個々のデザイナーが、
印刷の「特色」を活かしたペーパープロダクトをつくるまでの
その着想やプロセス、デザインについて聞いてきました。

あいにく当日は雨が降っていてとても寒い日でしたが、
会場は参加者で満員の状態で、立ち見も出るほどの盛況ぶり。

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会場に入ると大きなテーブルが3つ並んでいます。
イスも前を向いているわけではなく、
テーブルを囲むように並べてあります。

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実は今回のワークトークは通常のトークショーとは趣向を変えていて、
デザイナーの話を一方的に聞いているだけではありません。
デザイナーが2組づつテーブルに着き、
実際にデザインされた作品を目の前に対話をし、
そのデザインに触れるという試行のモノ。
さすがにトクショクシコウ展。

ではその6組のデザイナーがつくった作品とは
いったいどんなプロダクトなのか?


折水引 / 大友学 / 赤

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1枚の紙から"抜き"と"折り"のみで、
水引を表現した祝儀袋をつくった大友さん。
特色の赤がテーマなので、赤がデザインとして必然であること。
そして、紙でなければならないモノ。
このふたつを強く意識してつくったデザンの折水引。

最終的に商品をつくる機会が多いという大友さん。
コスト面にも配慮し、片面のみの印刷にして折りを加えることで
美しい水引をつくっていました。

実際に使う人が輪の間に紐を通すことで完成するデザイン。
伝統の様式美を漂わせながらも、人の温かみを感じるデザインでした。

そういえば既存の祝儀袋は
なかなかシンプルでいいモノが見つかりません。
今度使うときにはぜひ「折水引」をつかってみたいと思います。


MyTube / 菊地敦己 / 青

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普段から特色を駆使したデザインに定評がある菊池さん。
今回は以前から興味のあった紙管を研究したそうです。

下部はペンケース、上部はクリップなどの
小物入れになっているペンケースをつくりました。
既存のモノでは鉛筆が入るサイズの
ペンケースがなかなか見つかりません。
今回のペンケースでは鉛筆を収納できるサイズにしたそうです。

"インキ"と"かみ"をマテリアルとしてとらえ、
紙の上にインキをのせて何ができるのか。
発色のいい特色の"青"と"ホワイトオペーク"を使い、
チェックのパターンを印刷し、薄い平面の印刷の塗工の中に、
微妙な空間性を表現しています。

モノとしての魅力をどう引き出すかを計算してデザインされた、
菊池さんならではの個性的なペンケースになっています。
こちらは残念ながら販売はしていなかったのですが、
欲しいと言う方が多くいらっしゃいました。


PAPER PIECE / NIIMI / 白

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普段はプロダクトや家具のデザインを中心に活動している NIIMI DESIGN 。
今回、初となるペーパープロダクトは一筆籤や菓子敷きに使える、
小さな和紙のかけらをデザインしました。

障子に穴があいた時に塞ぐモノから着想した、この作品。
和紙の上にオフセット印刷で白を印刷しています。
オフセット印刷と和紙の組み合わせはとても調整が難しく、
何度も検証し、最終的に美濃の和紙を使用することに。
光を通す薄い和紙を使用したことで、
非常に繊細な"白"と"白"の組み合わせが日本的で美しいです。

また、マイクロミシン目という特殊なミシン目加工を施すことで、
つながったペーパーピースを使うときに、
簡単に一枚一枚切り離すことができます。
これも和紙と洋紙の繊維の長さが違うとことではじめて可能な、
本当に無駄が無いデザインです。


ToNoTe / 藤森泰司 / 茶

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無理にあたらしいモノをつくるよりは、
今まであったものに少し手を加えることで、
新しいモノをつくったと話してくれた藤森さん。

ご自身がいつも使っているノートを
使い終わったあとに、つなげて持ち歩けないだろうか...
と、普段目にするところから着想し、
簡単に整理できる使いやすいノートが
つくれないかを考えてデザインをしたそうです。

ミシン目に沿って表紙を切り離し、
別のノートの裏表紙に差し込むことで
ノートはつながっていきます。

使う人が少し自分で手を加えて使うことで、
このノートはさらに使う人になじみ、
より愛着を持って使うことができると思います。

また"茶"という色や大きさついても様々なモノを検討して、
最終的にはクッキーのように見えたり、重ねるとお菓子のように見える、
人が使うモノとしての魅力を存分に引き出していました。


空気の器 / トラフ建築設計事務所 / 緑

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2次元のモノから3次元のモノへ。

福永紙工の"切る"という技術だけで、
何かあたらしいモノができないかを模索していったトラフ建築設計事務所。

空気をつつみこみ、そのかたちを自由に変えることのできる、
紙の器をデザインしました。
その広げ方によって装飾用のラッピングや、花瓶、小鉢...など、
使う人の自由な発想とアイデアで、つかうことができるデザインです。

テーマカラーの"緑"に対しては、
表面が蛍光の"黄色"、そして内側を"水色"をすることで、
器の隙間から互いの色が見えることで、"緑"にも見えるという仕掛け。

これはオフセット印刷の原理を利用していて、
"黄色(イエロー=Y)"と"水色(シアン=C)"を
見た人の脳内で色を補間し合うことで、
"緑"に見えるようにするという、
まさにトクショクシコウ展ならではのデザイン。
見た人の脳内で、混ざっていない色をつくるため、
非常に発色の良いきれいな"緑"を想像させます。

強い色を持ちながらも空気のように存在する、
とても柔らかな美しい器ができました。


THREAD LID(ネジフタ) / 三星安澄 / 銀

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かみの工作所のディレクターとして、
第1回目から作品を発表している三星安澄さん。
今回は1枚の紙を折ることで、螺旋の形をした蓋と、
それに嵌合する口を持つ、オリジナルの箱をデザインしていました。

プロトタイプとして様々なかたち・構造を研究する中で、
四角柱のなかから、互いがうまくはまるカタチを見つけた三星さん。
みつけたカタチから、他にどのようなカタチで展開できるかを実験し、
最終的に"立方体"と"正反四角柱"という、2つの箱をつくりました。

かみのしなやかな柔らかさと、折ったときに生まれる剛性。
この相反する2つの特性を利用することで、
嵌めやすく、はずれにくい、いままでにない箱に。
蓋を嵌めたときに、すっと収まっていく感触はとても気持ちがよいです。

色については、"銀"という色を一番よく魅せるため、
様々な組み合わせの中から、"黒"を選択。
通常のインキよりも、ずっと発色の良い特殊な"銀"インキを使うことで、
コントラストの高い、独特の質感を持った箱になっていました。


今回のかみの工作所の作品は、
通常のデザインの進め方と異なることも多く、
"色"そのものをテーマとし、
限定された状況の中からデザインを進めていました。

先に色が決まった状態で、
紙の特性や、紙への加工を考えて展開する中で、
それぞれのデザイナーの考え方や
普段の暮らしのなかでの着目が、
より見えやすく試行性の高いモノとなりました。

デザイナーのみなさま、おつかれさまでした。


トクショクシコウ展は2月21日までの開催です。
この至高のプロダクトを、ぜひ会場で手に取ってご覧ください。

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かみの道具3 トクショクシコウ展

2010年1月29日(金)~2月21日(日) 11:00~19:00
AXIS リビング・モティーフ B1F「ビブリオファイル」内
106-0032 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル B1F
TEL: 03-3587-2784
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商品写真:冨田里美